我谷盆に魅せられて、はや十四年になります。
私の我谷盆は、丸太を板目で割り、板厚をととのえノミで刳りぬくという古来からの制作方法にこだわっている為、大きさや厚さを そろえるというのが難しく、ひとつとして同じ物がありません。
しかしそれが我谷盆本来の姿であり、魅力だと思っています。
現在、石川県の方でも製作される若い人がいなくて継承があやぶまれています。
私はこの盆の素朴さや、使い込む事によって存在感を増す生活民具としての良さを多くの人に味わってもらいたくて製作しております。
多くの方々に我谷盆の素晴らしさを感じて頂ければ幸いです。 森口 信一
我谷盆(わがたぼん)とは
石川県、江沼郡、菅谷と九谷の中間(現 加賀市)で、山中温泉よりの谷あいにある我谷村(わがたにむら)で、江戸時代初期来、生活具として作られた木地盆である。
材はこの村に多くとれた栗を用いており、丸太を割って板にするという素朴な製法により、同寸法の盆は二つとないと言われている。
この盆の特色は一枚板からノミで縁まわりをくり出し、見込みには丸ノミの平行線を鮮明に刻みつけているところにある。これが素朴であるが実に美しい装飾となっている。
しかし、我谷村(わがたにむら)は昭和三十三年ダム建設のため水没したことは惜しまれる。
著者 瀬良陽介
「盆百選」(平安堂書店)より抜粋
森口信一プロフィール
1952北海道生まれ
19773月 京都市立芸術大学美術学部彫刻科 卒業
1987黒田乾吉氏より拭漆の講習を受ける/京都
2001我谷盆の研究・制作を始める
2003~2010大阪成蹊大学芸術学部 工芸非常勤講師
2006みのお ものづくり表現未来塾 木工コース講師
2016加賀市山中温泉 風谷町に工房を持つ
来る11月11日(金) NHKBSプレミアム「美の壺」 木の器というテーマの番組の中で、我谷盆について紹介されることになりました。
ご高覧いただけると幸いです。